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高森明勅
2020.7.9 06:00皇統問題

宮内庁参与の交代

天皇陛下のご相談にお応えする宮内庁参与。
6月18日に交代された。

新しく参与に就任されたのは、兵庫県立大学理事長の五百旗頭
(いおきべ)真氏、元宮内庁長官の風岡典之氏、前最高裁長官の
寺田逸郎氏のお3方。

女性週刊誌の『女性自身』(7月21日号)がこのことを記事にしている。
同誌は「皇室自身」という渾名(あだな)を付けられるほど、
皇室について熱心に取り上げている。
一般には余り注目されない、参与の人事にまで目を配る辺り、
いかにも同誌らしい。

以前、小泉純一郎政権下で、女性天皇容認の皇室典範改正案が、
秋篠宮妃紀子殿下のご懐妊のご公表により、国会提出の直前で
見送られたという経緯があった(当時、私も内閣に設置された
有識者会議のヒアリングに応じた)。

その時、五百旗頭氏は以下のような見解を示しておられた。

「国民の幸せを願う天皇制の伝統は今も変わっていないと思う。
性別にこだわって廃絶の危険を冒すのではなく、男女いずれであれ、
おだやかな敬愛を集め国民とともにある天皇制を望みたい」
(産経新聞、平成18年2月12日付)と
(悠仁親王殿下お1方のご誕生だけで、皇室の危機を打開できた
訳では“なかった”ことは、今では誰の目にも明らか)。

このような方を
「内閣の関与を受けることなく、天皇陛下が唯一、最終的決定権を持っている」
(宮内庁関係者)とされる参与に迎えられた。
そこに、「国民が望むなら、愛子さまが将来、天皇として
即位することにもご異存はない」とのご意思を読み取ることが
できるのではないか、というのが記事の主旨。

興味深い着眼点だ。
私は別に、風岡氏の参与就任に目を向けた。
一見、慣例に従った普通の人事のように見えるかも知れない。
しかし、風岡氏は長官在任中、首相官邸との軋轢(あつれき)にも
屈しないで、平成28年8月8日の上皇陛下のビデオメッセージを、
実現に漕(こ)ぎ着けられた。
これによって、ご譲位への国民の圧倒的な共感が目に見える形で
浮かび上がり、事態はようやく前に向かって動き始めたのだった。
だから同氏は、この度の御代替わりの最大の功労者とも言える。

しかし、そのことが官邸の逆鱗(げきりん)に触れ、
“前倒し”的な退任を余儀なくされたことが、記憶に新しい。
もっと前のことでは、野田佳彦内閣で(宮内庁の働き掛けに応じて)
初めて「女性宮家」についての検討が進められた時の長官でもあられた。
そうした経緯を改めて振り返ると、風岡氏を参与に選ばれた陛下の
お考えを、およそ拝察できるのではあるまいか。

なお、『女性自身』には敬宮(としのみや)殿下を巡る
ウェブサイト(「愛子さま 皇太子への道」)を紹介し、
同サイトの管理人「ちぇぶ」氏(ハンドルネーム、女性)の
コメントを載せる。

「天皇陛下のご長女でいらっしゃる愛子さまが、
女性であるというだけで皇太子になれず、
安定した皇位の継承が難しくなっていることに納得できないのです」と。

秋篠宮殿下のご即位が、年齢面で不透明感を拭(ぬぐ)えない中、
天皇陛下の最もお側近くで、ご健康でご聡明にお育ちになる
敬宮殿下のお姿を拝している国民の間には、同様の受け止め方が
意外と広く共有されているのではあるまいか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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